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​湧き上がる
探究心が未来を切り開く

夢はなかった

待ち合わせは、ルナクレスタKYOJO原宿からすぐの、お洒落なカフェレストラン。

「以前、このお店に来た時、居心地が良く空気感が好きだったので」

 と美味しそうにパスタを食べながら話す岡部さん。

小雨が降る日だったが、白いシャツに天然素材のパンツを合わせ、爽やかなスタイルで笑う彼女は、半年前に会った時よりも綺麗になっていた。何かありました?

「ルナで働かせていただいて意識が変わったのかもしれません」

 

山形県米沢市出身。

のどかで雪の時期が長い田舎での冬の遊びといえば、スキーやクロスカントリーだというから、かなりの体育会系だったのでは?

「いえいえ。部活は友達が入るからソフトボール部に決めただけで、何となく流される人生でした。夢や将来は何も考えていませんでした」 

しかし、流されるままの人生は、きっかけがあれば何でも挑戦するという好奇心旺盛な彼女の魅力を開花させた。もともと、中途半端では終わらせない性格。

中学のソフトボール地区大会では、長年負け続けてきたライバル校に絶対勝つ!と宣言し、見事、優勝を果たした。

負けず嫌いではないと言うが、

「周りには見せないだけで、秘めたる闘志があったのかもしれませんね」

と目を少し細めて笑いながら、こう続けた。

「勝てたのは、練習はもちろんですが、何でも言いあえる仲間がいてチームワークが良かったのです」

少し遠くを見る瞳の先に、あの頃が映っているようだった。

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早く家を出たかった

祖父母、両親、姉と6人暮らしだった。

祖父は厳しく、家族の起床・就寝時間を決め、外食禁止など規則が多く、祖父の言うことは絶対だった。

 一番耐えることができなかったのは、祖父の祖母に対する暴力。岡部さんも殴られることもあったという家の中は、毎日、誰もが祖父に怯えて暮らしていたという。

 両親のことは好きだった。建具の仕事に就いていた父。

まだ幼い岡部さんも、一緒に障子を張り、綺麗に張れると次はどうしたらもっと綺麗にスムーズに張れるかを考え、前よりも完璧に張れた時、嬉しくてたまらなかった。

この頃から岡部さんの好奇心と探究心は芽を出していた。

一番の思い出は、父が扉の空洞にこっそり絵を描くという誰にもバレない二人だけの楽しいイタズラ。

今でも心の中に大切にしまっている。

 しかし、父も祖父に逆らうことはできず

「早く家を出たかった。。」

 

彼女の頬に涙がつたった。

仙台へ、東京へ

ちょうど日本はバブル崩壊時。

両親に金銭的援助を受けるわけにはいかなかった。

とにかく、家を出る為、高校卒業後、仙台に行き、住み込みで美容師見習いとして働くことにした。

朝早くから夜遅くまで働き、夜中は通信教育で学ぶという毎日。2年後には美容師免許を取得し、自活が出来るようになればと考えていたが、実際には、その2年が待てなかった。

当時、付き合っていたデザイナーの彼氏との夢ができたのだ。

将来、彼氏がデザイン、岡部さんはヘアセットを担当するという、10代の夢と恋は、改めて当時1年間で資格取得ができた美容専門学校進学への道を選択させた。

住み込みの美容師見習いを辞め、入学費用を稼ぐため、縫製工場や飲食店など掛け持ちで昼夜問わず働き、山野美容専門学校入学。

その後、やっとの思いで念願の美容師免許を取得した岡部さんだったが、彼女が美容専門学校へ進学した頃には、美容学校の修業期間が通信教育同様、1年から2年に改定され、彼女が夢を急ぎ選択した道は逆に遠回りをする結果となってしまったのだと言う。

しかし、その期間は彼女にとって自分を知るための、かけがえのない時間になったようだ。

アルバイトの縫製工場では、ミシンをかけ、細かい作業に没頭し、出来上がりの完成系を想像し、完璧に作り上げるまで追求する工程は、たまらなく楽しかった。

さらに学校に通い、友達と語り、外食をし、アルバイトをし、

「普通の生活ができる幸せを感じました」

 と、また少し遠くに目をやった。

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美容師になるも直ぐ退社
資格を活かして新たな道へ

自活する為に取得した美容師免許。

しかし、23歳で勤務した会社では、思い描いていたファッションショーやコレクションでヘアセットを担当することからは遠くかけ離れていた。洗髪、カット、パーマ、カラ―の毎日に、

「何かが違う」

 退職した。思い立ったらすぐ行動する真っすぐな性格。

それが彼女の強みかもしれない。

せっかく取得した美容師免許をいかそうと、カツラの会社で、ウイッグアドバイザー美容師として転職。

医療用からファッション、エクステまでを扱う販売員としてリスタート。

美容師としての観点から、お客様に接することができ、今まで知ることのなかった、ひとりひとりにあったカツラの重要性を感じた。

3年勤めた頃、出産にともない退職。子育てしながら働ける工場でのパート勤務を選んだ。そして、子供が少し手を離れた35歳で、再びカツラ業界へ。

今度は販売員ではなく、カツラの商品開発者として採用され、さらにカツラの奥深さを知ることになった。

完成系をイメージして、素材、パターン、スタイル、カラ―の混合、頭皮部分の接着面など、いかにお客様につけていただいた時、心地よく、自然に見えるように作るかを考え抜き、ひとつひとつを研究していくことが楽しかった。

「カツラは奥が深く、無限の可能性があり、まだ世の中に出ていない新しい形があります。

人生の中でこれだ!と思える職業に出逢いました」

コロナで再び退職
ルナクレスタとの出会い

「このままずっと、この仕事をしていたかった」

 しかし、コロナがその希望を打ち砕いた。

海外からのカツラに必要な素材がストップしたのだ。

会社は調達できる範囲の材料で作れる定番商品を主力にした。

納得いかなかった。

「ひとつ10万円以上するカツラです。本当に自分がいいと思う商品を作る!という気持ちで完成させたからこそ、お客様にも自信を持って高価な商品をお薦めすることができるのです」

 それができなくなった時、彼女は退職を決めた。

美容師免許をいかすことを前提に求職活動をしていた時、ルナクレスタの高橋社長から連絡があった。

履歴書を見て、岡部さんにキラッと光るものを感じたのだろう。

面接での高橋社長の印象は、

「爽やかで、さっぱりしていて、働きやすそう」

 今では、言いたいことを言ってしまうこともあるそうだが、企業の風通しがいいのだろう。

もちろん、再びカツラ業界で働きたい気持ちはあったが、もともと華やかな世界に魅力を感じていたので、まつ毛・眉毛・前髪の3Mで女性を美しくするという新しい世界に好奇心がわいた。

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好奇心に火がついた
自問自答し完璧を目指す毎日

入社後、約1カ月の研修期間はかなりハードだった。

次世代まつ毛パーマとアイブロウの専門家にみっちりと教育を受ける。コロナもあり、まずはオンラインやビデオで学び、最後は数日で30名以上に施術するという鬼の特訓。

しかし、まつ毛が傷まない、安全、綺麗に仕上がる、優しい液を使用するなど、研修時の確かな裏付けのある教育に納得し、もともと持っている岡部さんの好奇心に火がついたのだ。

「自分がいいと思えないと、お客様に薦めることができなかった」

 前職のカツラ業界を辞める時の思いだった。

ルナクレスタでは、それはもうない。他のまつ毛パーマとは違う。自信を持って、薦めることができる技術と知識を学んだ。

そして実践を重ねるたびに彼女の好奇心はどんどん加速し、それが探究心となり、勉強熱心という言葉に置き変わり、周りからは真面目過ぎると思われているところもあるようだが、それが彼女の最大の魅力だ。

「お客様に声をかけていただく前に、気付き、先に施したい」

 を常に意識しているという。

何かあれば声をかけてくださいとお客様に伝えるが、施術の最後まで声をかけられることなく、お客様が感じることを先に感じとって施術にあたりたいという完璧主義。

「完璧ではありませんが、目指しています」

​門前仲町STATIONへ

半年前、岡部さんに施術してもらった頃を思い出した。

まな板の鯉のように何がどうなっているのか分からず施術を受けたので、今度はその様子を見に行こう!と門前仲町の店をのぞいた。

 お客様ひとりひとりの希望に寄り添う彼女がいた。

まぶたの形、毛の長さや質、肌質、デザイン、巻き上げるロット、タイミングなど、まつ毛という小さなパーツの奥深さにハマったという彼女の言葉を思い出す。

 施術時間約90分。お客様との会話は少なめだった。というか、お客様は眠っていた?と思うほど、ほぼ語ることなく、施術が進んだということだ。

「ゆっくり目を開けてください」

 の岡部さんの声に、お客様が目を開け、鏡に映る自分をじっくり見る。そこに笑顔はない。お客様が「この一本・・・」とひと言。どれ??と思うほど分からない眉毛の一本を指していた。(まつ毛・眉毛の両方施術のお客様)

岡部さんは、動揺することなく説明をしながら、お客様とイメージ確認し、一本の眉毛を抜いた。

お客様は静かに微笑まれ、次回予約をして帰っていかれた。撮影にも快諾してくれたお客様に岡部さんと一緒に

「ありがとうございました!」

 とお見送り。

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​一本が笑顔の決め手になる

施術後、次の予約までの短い時間、無理を言って、門前仲町を一緒に散歩させてもらった。

「たった一本で、笑顔になるかが決まります」

と語る彼女は、先ほどのお客様の可愛く美しい顔が浮かんでいるようで、肩の力を抜いて陸橋を笑顔で歩く。

そして、半年前よりも綺麗になった彼女はこう話す。

「私が綺麗になったかどうかは分かりませんが、コンシェルジュのビジュアルで、お客様への美に対しての説得力が深まると思っています」

これからもますます綺麗になられますね。

何故なら、岡部さんにはIT関係に勤める旦那様と、年頃の娘さんがいて、毎日、娘さんと美容の話で盛り上がるというのだから。

綺麗な奥様&ママの岡部さん。さらに素敵になっていくんだろうなぁ。

ところで、もし、娘さんが美容師になりたいって言ったらどうしますか?

「だめ!反対します」

そう、岡部さんは、大変さを知っているから。

好きな道に進むこと、好奇心のある道に進むことは、楽しさと反対に苦しみをも生むから。

しかし、それをひとつずつ乗り越え、お客様の笑顔で新たなる好奇心の世界へ彼女は足を踏み入れ、お客様の幸せとともにこれからも進化していく。

​進化するコンシェルジュ
​共に進化する企業

最後に、直近の目標を聞いてみた。

「技術力はもちろんのこと、コミュニケーション力をもっとつけたいです」

 ゆっくり静かに対応してほしいお客様もいれば、お話し好きなお客様もいる。

その空気感からお客様のことを知り、より素晴らしいサービスに繋がっていくという岡部さん。

今回、改めて施術をしてもらったが、取材なのに眠りそうになってしまった! 岡部マジック! 

それはさておき、もうひとつ彼女の大切な気持ちを教えてもらった。

「社長は、夢を持って事業をされています。それをサポートしたいんです」

続けて「カツラもまだ、諦めていません」と話す岡部さん。

まつ毛もカツラも人を幸せにする商品であり、高橋社長にはルナクレスタでカツラを扱えないかと既に相談をしていると言う。

何でも話せる企業の強みは、個人も企業も進化させていく。

真面目で一途なゆえに、時に意見し、波風を立てることもあるようだ。

しかし風通しの良い組織では、彼女のような個性&キャリア溢れる魅力人は、組織を活性化するいい波となり風となる。

基本の上に更なる知識と技術と感性を身につけ、新たな世界観を創出し、お客様に心地よい空間でサービスを提供するというコンシェルジュ。

 何故、岡部さんが、待ち合わせを空気感のいいカフェレストランにしたのか、分かった気がした。

そう、それは彼女がコンシェルジュだから。

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​岡部 梢 Concierge
■ ​KYOJO原宿
■ 門前仲町STATION
​■ 西葛西STATION
​勤務拠点

​写真&文章 本堂亜紀( Director / Photographer / Personal trainer /Writer ) 連絡先:akihondo@jt7.so-net.ne.jp

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